土木学会関西支部市民幹事会では、将来の社会を担う子供たちに、暮らしを支えている社会資本整備や災害のメカニズムなどを伝えることは重要と考え、土木と学校教育とをつないでいく取り組みとして、学校教育に携わる教職員の方を対象に、平成21年度の小中高生対象見学会と同日、『防災・危機管理』をテーマに、初めて開催しました。見学及び講義について、以下に報告いたします。
京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリー
≪浸水体験≫
今回の研修会では、京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリーにおきまして、実物大階段模型及びドア模型を用いた浸水体験を行いました。実物大階段模型は、地下街での浸水被害を想定したもので、水が流下してくる階段での避難の困難性を体験するためのものです。今回は、水深を30cmとして体験させていただきました。今回の体験装置では、手すりや照明があることから全員が無事に上がることができましたが、実際の浸水現場で、手すりが無く停電している状態を考えると、地下街からの避難が困難であることが理解できました。また、ドア模型は、ドアの反対側に水がある場合、水圧でドアが開かなくなることを体験するためのものです。今回は、水深を20cm〜40cmまで10cmづつ上げていただき、その違いを体験させていただきました。水圧の意外な強さに驚きました。
≪「防災・危機管理」講義≫
昨年7月の神戸市都賀川増水事故の調査団長を務められた、神戸大学の藤田一郎教授から、同様の災害が過去から世界中で発生していること、また近年は地球規模での気象の変化とも関連して多発する傾向にあることや、神戸の地形的特徴に起因する水害の歴史、今回の事故を教訓とした川での正しい遊び方など河川災害から身を守るために知っておくべきことについて、講義していただきました。
いずれも、水害の恐ろしさについて見聞きするのみでなく、体験を通して理解できたことはもちろんですが、このような災害が身近に起こりうることと、危険が迫る前に安全確保を図る意識の大切さを学んだことにも、大きな意義があったと思います。
京都府流域下水道いろは呑龍トンネル
いろは呑龍トンネルは、ハイブリット親子シールドによる長距離掘進工法を採用したことにより、平成20年度土木学会関西支部技術賞を受賞した施工物件です。見学先は、乙訓ポンプ場から約25mの階段を降り、直径6.1mの管路内約200mを歩きました。普段目にすることのない地下に、このような巨大な施設があったことに驚きを感じると同時に、自分たちの町を水害から守るためにこのような仕組みが施されていることを知ることが出来ました。また、管路内ではいろは呑龍トンネルに関するクイズも行われ、楽しみながら水害対策について知ることが出来ました。現場事務所においては、シールド工法の説明をしていただき、スケールの大きい土木構造物を目の当たりにし、高度な土木技術について知ることが出来ました。
京阪電鉄淀駅の高架化工事現場
鉄道の高架化について、パワーポイントとプラレール実演を併用したわかりやすい説明を行っていただき、鉄道と道路の立体交差化によって、踏切事故の解消や渋滞の解消に大きな効果があること、 工事においては電車を止めずに、かつ道路通行止めを最小限とするための努力と工夫があることを知ることが出来ました。また、工事現場においては、ホームから線路に下ろしていただき、ホームは思っていたよりも高いことを体験することが出来ました。
以上、盛りだくさんの見学により、災害から町を守り、住み良いまちをつくる為に、土木が大切な仕事であることを知ることが出来、また普段目にすることのないところに多くの工夫が凝らされていることを知ることが出来ました。
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