土木学会関西支部市民幹事会では、将来の社会を担う子供たちに暮らしを支えている社会資本整備や災害のメカニズムなどを伝えることが重要と考え、土木と学校教育とをつないでいく取り組みとして、学校教育に携わる教職員の方を対象に講習会を昨年度より開催しています。
●『必見!地震防災の最前線』(主催:国立大学法人 兵庫教育大学、共催:(社)土木学会関西支部)
●『知っておきたい耐震技術』(主催:国立大学法人 兵庫教育大学、共催:(社)土木学会関西支部)
『必見!地震防災の最前線』 | |||||
開催日時 | 平成22年8月4日(水) | ||||
場 所 | 国立大学法人 兵庫教育大学 神戸サテライトキャンパス、人と防災未来センター | ||||
主 催 | 国立大学法人 兵庫教育大学との共催 | ||||
対 象 者 | 小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教職員40名 | ||||
講 師 | 鍬田泰子(神戸大学大学院工学研究科市民工学専攻 准教授) | ||||
国立大学法人 兵庫教育大学 神戸サテライトキャンパス
≪講義≫ 神戸大学の鍬田先生より「必見!地震防災の最前線」というテーマで講義をしていただきました。まず地震発生のメカニズム、兵庫県周辺の地震活動状況といった基礎的なことに始まり、阪神淡路大震災以降は全国的に地震計の整備が進み、多くのデータをもとに研究が進められていることを説明していただきました。 また、地震と活断層の関係や注意しなければならない点など、分かりやすく説明していただきました。 それから、上下水道、電気、ガスといった地中に埋設されているライフラインは普段の生活には欠くことができない施設です。そのライフラインについて、その役割や阪神淡路大震災の時の復旧状況の説明及び地震が発生した後も電気やガスを絶え間なく供給するために耐震化が進められていることなどを学びました。 人と防災未来センター ≪講義≫ 人と防災未来センター主任研究員の石川さんより「安全な住まいと防災教育」をテーマに講義をしていただきました。最近、発生した新潟県中越地震の被害状況等の紹介を交え、主に住宅の耐震補強の重要性について説明していただきました。 その後、石川先生が過去に小中学生を対象とした防災セミナーを行った時の経験をもとに、生徒に教える場合のポイントとして、自分の暮らす地域の過去の被害状況を調べたり、これから発生するかもしれない地域の危険性を知っておくこと、家具の固定など事前対策といったことの重要性などの項目について、取り入れると良いことを教えていただきました。 また、学校で生徒に教える際の教材として、 「紙ぶるる」 (紙で作る住宅の模型で補強のあるなしを視覚的に理解できる教材)などについても紹介していただきました。今後の授業で使える教材例として参考になったのではと思います。 ≪見学≫ 人と防災未来センターは平成7年に発生した阪神・淡路大震災の経験を語り継ぎ、その教訓を未来に生かすことを通じて、安全・安心な社会を実現するために平成14年に設置されました。まずは「震災追体験フロア」では地震当日の様子を再現した迫力のある映像を上映する1.17シアターや復興に至るまでの過程をドラマで紹介する大震災ホールを見学しました。ここでは家屋やビルが倒壊する様子や地震のすさまじい破壊力や同時に発生した火災の怖さなどを映像により体験することができました。 次に当時の様々な資料や体験談が展示された「震災の記憶フロア」を見学しました。被災者から提供を受けた資料などを通じて、当時の大変さについて、感じ取ることができたのではと思いました。 阪神・淡路大震災からすでに15年が経過し、当時の様子を直接知っている子供はわずかになった今、その状況や教訓を次世代に語り継ぎ、その経験を風化させないことは重要ではないでしょうか。今回、見学した「人と防災未来センター」は生徒が実際に映像や資料で分かりやすく体験できる施設として、教職員の方々には参考になったのではと思います。 | |||||
参加者の皆様へ
この度は、国立大学法人 兵庫教育大学と共催の教員免許状更新講習『必見!地震防災の最前線』にご参加いただき、誠にありがとうございました。皆様のご協力により、無事に講習会を終えることができました。心よりお礼申し上げます。 皆様には、本日の研修会をきっかけとして、災害時には防災拠点や避難場所にもなる学校現場で、日頃からいろんな機会をとらえて、防災や危険予防について児童・生徒のみなさんと一緒に考えていただくとともに、道路や川、上下水道、港、鉄道など身近にあるさまざまな社会基盤施設には、素晴らしい土木技術が活かされていることを、一人でも多くの児童・生徒に伝えていただければ、と願ってやみません。 アンケートで頂戴した貴重なご意見は、「教員免許状更新講習」はもちろん他の企画の実施に向けた検討の参考にさせていただきます。今後もさまざまな行事を開催する予定ですので、ぜひご参加いただければと思います。 アンケート結果(PDF A4 2頁 約180KB) 見学先関係者の皆様へ 今回の講習会の開催に当たり、人と防災未来センター様には、様々な面でご協力をいただきました。また、当日ご説明いただいた皆様には、丁寧でわかりやすいご説明をいただきました。本当にありがとうございました。 参加者の皆様へのアンケートをおこなった結果、感想として「阪神大震災等で教訓となった課題などを今の最新の研究と合わせて知ることができ、今後の防災教育に役立てられると感じた。」、「座学だけでなく、資料を見たり、映像を見たりするのは良かった。」といった意見をいただき、好評だったと認識しております。国立大学法人 兵庫教育大学の教員免許状更新講習との共催企画として今年が初めての開催でしたが、今後も何らかの形でこのような企画を継続していきたいと考えております。 今後とも、土木学会関西支部行事へのご理解とご協力をいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。 | |||||
講座の様子 |
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『知っておきたい耐震技術』 | |||||||||
開催日時 | 平成22年8月27日(金) | ||||||||
場 所 | 国立大学法人 兵庫教育大学 加東キャンパス、兵庫県広域防災センター、E−ディフェンス | ||||||||
テ ー マ | 必見!地震防災の最前線 | ||||||||
主 催 | 国立大学法人 兵庫教育大学との共催 | ||||||||
対 象 者 | 小学校、中学校、高等学校、特別支援学の教職員38名 | ||||||||
講 師 | 藤永 隆(神戸大学自然科学研究環都市安全研究センター) | ||||||||
国立大学法人 兵庫教育大学 加東キャンパス
≪講義≫ 神戸大学の藤永先生より「知っておきたい耐震技術」をテーマに主に建物の耐震補強、とりわけ学校の耐震補強について詳しく講義をしていただきました。 まずは地震と耐震設計基準のこれまで経緯などについて説明していただきました。建築基準法は過去の大きな地震の経験をもとに強化されてきており、とりわけ、昭和56年の建築基準法改正では新耐震設計法が導入され、その前後で耐震性が大きく異なるそうです。現在、小中学校等で進められている耐震補強はその法改正前の基準で建築された建物が対象になっており、兵庫県下でも公立小中学校でまだ約4分の1の学校が補強されていない状態で、予算等の制約があるなか、より安価な耐震補強方法などが研究されているそうです。 また、法改正前の基準で建築された、いわゆる既存不適格と言われている建物で補強されていない建物は学校に限らず多く存在します。今後は、これらの建物の補強についても進めていくことが重要であることも学びました。 また、学校で生徒に教える際の教材として、「紙ぶるる」(紙で作る住宅の模型で補強のあるなしを視覚的に理解できる教材)、液状化実験の方法などについても紹介していただきました。今後の授業で使える教材例として参考になったのではと思います。 兵庫県広域防災センター(三木総合防災公園内) ≪見学≫ 兵庫県広域防災センターは災害時に兵庫県全域をカバーする広域防災拠点である三木総合防災公園の中核施設で兵庫県消防学校も併設し、各種の訓練施設(地震、火災、鉄道事故、水難事故等)も備えています。 まずは施設概要の説明を聞いた後、公園内の各施設を見学しました。特に陸上競技場のスタンド下にある備蓄倉庫では保管してある食糧、テント、トイレといった物資や災害時に消防隊の方が使用する救助用の器具等を見せてもらいました。 その後に訓練棟に移動して、実際に煙避難体験と起震車による地震体験を行いました。特に地震体験では色々な震度(3〜7)や過去のいろいろな地震の揺れを経験しました。同じ震度でも揺れの周期等が異なると、異なった揺れ方となることが体験できました。また、煙避難体験では煙が充満した暗闇の中で、避難口の明かりをたよりに出口を探すという貴重な体験ができました。 E−ディフェンス ≪見学≫ E−ディフェンスは独立行政法人防災科学技術研究所が設置した実大3次元振動破壊実験施設で、実際の地震と同じ複雑な3次元の揺れを作り出す施設です。その振動台では1200tまでの実物大の建物を阪神・淡路大震災と同等の揺れを作り出して実験できる、日本で最大の施設で、国内をもとより海外からも多くの方が視察に訪れているそうです。 当日は招へい研究員の中山さんに「知っておきたい耐震技術〜振動台の有効利用〜」というテーマで講義をしていただきました。従来、耐震工学の分野では、模型を震動台に載せて研究をしていたが、小さな模型実験で行うと破壊挙動が変わってしまう可能性もあることから、近年は計算機を用いたシミュレーションと実験を組み合わせるハイブリッド実験が行われるようになっているそうです。 また、これまでの実験映像として、通常の木造2階建て住宅、イタリアの木造7階建て住宅、橋梁の橋脚、長周期地震動による高層建物の大震幅に備える実験(家具等の固定状況の有無による被害の違い)などを見せていただき、建物の耐震補強や家具を固定することの重要性がよく分かりました。 その後に施設を見学させていただきました。年間10件程度の実験を行っているそうですが、実験棟の外側で建物を建築して、実験台まで台車で移動するそうです。見学当日も病院や学校などの実験用建築物の準備が進められており、準備期間の長さやスケールの大きさなど、携わる関係者の苦労は大変なものだと実感しました。 | |||||||||
参加者の皆様へ
この度は、国立大学法人 兵庫教育大学と共催の教員免許状更新講習『知っておきたい耐震技術』にご参加いただき、誠にありがとうございました。皆様のご協力により、無事に講習会を終えることができました。心よりお礼申し上げます。
見学先関係者の皆様へ
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講座の様子 |
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