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■ 受賞者 ■ |
■ 受賞業績内容説明 ■ |
下弦ケーブルを用いた有ヒンジラーメン橋の補強設計と施工 −喜連瓜破高架橋補強工事− |
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阪神高速道路公団大阪管理部
株式会社富士ピー・エス関西支店 |
閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削 −京阪奈新線 東生駒トンネル、北大和トンネル− |
奈良生駒高速鉄道株式会社
近畿日本鉄道株式会社奈良生駒高速鉄道新線工事事務所 奥村・前田・五洋・不動特定建設工事共同企業体 鹿島・飛島・東急・淺沼特定建設工事共同企業体 大林・清水・戸田・村本特定建設工事共同企業体 |
震災復興事業に併せた神戸地区の鉄道整備とまちづくり |
神戸市
西日本旅客鉄道株式会社 |
日本初の一次覆工のみによる立坑の築造 −箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区) |
大阪府道路公社
鹿島・大成・東亜・三井住友・青木あすなろ共同企業体 |
阪南港 阪南2区 人工干潟の造成 |
大阪府港湾局
関西電力株式会社 東洋建設株式会社 |
構造物の鉛直、水平変位および傾斜角計測システムの開発と運用 |
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中央復建コンサルタンツ株式会社
綜合計測株式会社 大阪大学大学院教授 松井繁之 |
南阪奈道路の建設 |
国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
大阪府富田林土木事務所松原建設事業所 奈良県高田土木事務所 日本道路公団関西支社奈良工事事務所 大阪府道路公社 |
<技術賞> 下弦ケーブルを用いた有ヒンジラーメン橋の補強設計と施工 −喜連瓜破高架橋補強工事− | |
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阪神高速道路公団大阪管理部
株式会社富士ピー・エス関西支店 | |
阪神高速道路松原線喜連瓜破高架橋は1979年に建設された有ヒンジラーメン橋であり、ヒンジ部での顕著な垂下がりが確認され、対策を必要としていた。2002年時点の経過観測では、桁としては計画の高さから240mm、舗装のオーバーレイを行っていた路面でも約120mmの差を生じており、年変化量も5mm/年程度の進行を示していた。
このヒンジ部の垂下がり抑止、たわみ回復を目的として、主桁下面に鋼製のストラット部材を設け、外ケーブルを偏心配置させる補強構造を初めて採用した。設計・施工にあたっては桁下の交差点交通に影響を与えないよう配慮するとともに、補強効果の確認のために、補強前後の実橋静的載荷試験、補強後の経過観測など各種計測・試験を行った。 本補強工事により、40mmのたわみ回復量を得ることができ、路面での差の約1/3を解消することができた。また2005年1月時点の計測では、垂下がりの進行は認められていないことから本補強工法の有効性が確認された。 本業績は、地域に配慮して施工中の街路交通に与える影響を最小限に抑えたことや、調査・工法の実施・効果の確認等に総合的な対応をしていること、今後の大きな課題であるメンテナンス分野において、同様の問題を抱える橋梁の対策工法としての活用が期待されることなどが評価された。 |
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喜連瓜破高架橋補強工事完成状況 | |
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<技術賞> 閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削 −京阪奈新線 東生駒トンネル、北大和トンネル− | |
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奈良生駒高速鉄道株式会社
近畿日本鉄道株式会社奈良生駒高速鉄道新線工事事務所 奥村・前田・五洋・不動特定建設工事共同企業体 鹿島・飛島・東急・淺沼特定建設工事共同企業体 大林・清水・戸田・村本特定建設工事共同企業体 | |
けいはんな線(8.7km)は、奈良県北西部に位置し、開業後は大阪湾ベイエリアと関西文化学術研究都市とを結ぶ鉄道東西幹線軸形成の一翼を担う。路線の約6割がトンネルで、そのうち東生駒トンネル(延長3,625m)は、閑静な住宅地とゴルフ場直下(土被り60〜70m)の岩盤地山、北大和トンネル(延長1,100m)は、閑静な住宅地直下(土被り7〜26m)の未固結含水地山と、非常に厳しい条件の中で、安全性確保、環境保全を前提に経済性を追求してトンネル掘削を行った。
施工に際しては、発破による騒音振動対策、盛土直下や断層湧水区間の地表面沈下対策が課題であったが、綿密な計測管理と計測結果を次の施工に反映して追加対策を実施し、徹底した情報化施工を行った。また地元とは、環境管理値、実測値等を積極的に情報開示し、現場見学会を開催することなどにより信頼関係を構築した。その結果、当初目標どおりの工期、工事費で工事を完成することが出来た。 都市の高密度化、再構築に伴い今後も住宅地周辺でトンネル掘削を行う機会が増えるものと予想されるが、住宅地周辺で岩盤地山を発破方式、未固結含水地山を都市NATM工法により掘削した本事例は、大いに参考になるものと考えられる。 本業績は、種々の厳しい条件下において、綿密な技術的対応、地域住民へのアカウンタビリティの積極的な実施、安全性の確保、住環境の保全、コストの削減等により今後の土木事業に何が必要であるかを明確に示したことや、鉄道の開業により地域の発展性を大きく創出することなどが評価された。 |
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閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削−けいはんな線 東生駒トンネル、北大和トンネル− | |
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<技術賞> 震災復興事業に併せた神戸地区の鉄道整備とまちづくり | |
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神戸市
西日本旅客鉄道株式会社 | |
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けた神戸市は、新長田・鷹取地区および東部新都心(HAT神戸)地区において、復興のまちづくりと連携し、以下のような鉄道ネットワークの再構築や駅周辺整備を行ってきた。
(1)震災復興土地区画整理事業に併せた鷹取工場移転に伴う工場検修機能の再配置と、近畿圏内での効率的な車両運用が可能となる網干電車区の総合車両所化 (2)東部新都心整備事業等で移転が必要となったJR貨物神戸港駅の代替地として、工場移転により機能停止となる鷹取駅構内の低効率用地を活用したコンテナ輸送形態の改善 (3)貨物機能移転事業に併せた鷹取駅構内南北自由通路整備による、鉄道利用者への利便性向上とまちづくりにおける面的整備への貢献 (4)震災復興土地区画整理事業における鉄道・工場用地を活かした防災拠点機能を有するまちづくり 本事業は、震災復興にあたり、単なる鉄道施設の再整備にとどまらず、都市部における災害に強いまちづくりと鉄道整備とを一体化させて実施したという点では、過去事例の稀有な先駆的業績であり、地域への貢献度は極めて高いものであると考えられる。 本業績は、震災というマイナスのインパクトを逆に利用し、都市の防災性向上という大目標を掲げ、官民が一体となって鉄道施設の効率的配置とまちづくりを密接に関連させつつ、震災地域の復興に大きく貢献するプロジェクトとして短期間に事業をまとめあげた点が評価された。 |
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震災復興のまちづくりにおける鉄道ネットワークの再構築と駅周辺整備の実施状況 | |
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<技術賞> 日本初の一次覆工のみによる立坑の築造 −箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区) | |
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大阪府道路公社
鹿島・大成・東亜・三井住友・青木あすなろ共同企業体 | |
箕面トンネルは国道423号バイパスの中心となる延長5.6kmの山岳トンネルで、新御堂筋北部の北摂山地を貫き、北大阪地域と大阪都心部を結ぶ交通の主要路線となる有料道路トンネルである。構成としては、本坑、避難坑の他、地下換気所および換気立坑などを併設している。
換気立坑は、331mにも達する大深度であるが、合理的な設計のもとに、従来の2層構造の覆工コンクリートに対して、配合および施工法の両面から耐久性を高めて1層のみの構造にして全体の覆工厚さを半減させた。つまり、覆工コンクリートの配合を高強度および高じん性に改良するとともに、密実にコンクリートを打設するため、従来の流込み打設に替えて、ポンプ圧送方式による打設を確立した。 逆巻きコンクリートならではの打設の困難さや、湧水の集水方法などに苦労したが、独自の施工方法を確立し、問題点を克服した。 換気立坑にシングルシェルを実現させたのは箕面トンネルが初めてであり、先駆的な取り組みによって3.5ヵ月の工期短縮と17%の工事費の縮減を達成することが出来た。 本業績は、コンクリートの品質確保や打設方法等で様々な技術的な工夫を行うことにより、山岳トンネルにおいて通常施工される二次覆工を省略し、工期の短縮とコストの縮減を達成した先駆性やその判断、今後の高品質・高耐久コンクリート構造物への発展性が期待できることなどが評価された。 |
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箕面トンネル換気立坑(施工中と完成後) | |
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<技術賞> 阪南港 阪南2区 人工干潟の造成 | |
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大阪府港湾局
関西電力株式会社 東洋建設株式会社 | |
阪南2区人工干潟は、生物の生息・生育空間の創出や水質浄化機能の向上を目的として、大阪府岸和田市沖合に整備した潮間帯面積1.6ha(整備面積5.4ha)の人工干潟である。
本事業は、民間企業と地方自治体が「大阪湾の自然再生」という目的に向かって連携し、民間の建設工事から発生する浚渫土砂を干潟造成に有効利用することにより、環境負荷低減と環境再生、干潟の早期造成、コストの削減を実現した事例である。 今回の干潟造成は、高含水比で軟弱な浚渫粘土を用いた、8〜11mという大水深での干潟造成となったが、室内実験と現地試験施工による検討を重ね、中仕切堤の築造と、大規模海洋工事では初めてとなる生分解性シートの採用により、潮間帯の確保や覆砂の浚渫粘土中への潜り込みの防止といった課題を克服し、大阪湾の干潟面積を大幅に増大させ、大阪湾再生に貢献するものである。 今後も、航路浚渫等により浚渫土砂は継続的に発生すると予想され、本工事の成果は、軟弱な浚渫粘土を有効活用した環境再生の実現に大きく貢献するものと考えられる。 本業績は、浚渫土砂処分と干潟の再生を官民の連携によりリンクさせ、環境負荷低減と環境再生、さらにはコストの縮減を同時に達成した先駆的事例であることや、環境に配慮した事例として、今後の同種事業への発展が期待できることなどが評価された。 |
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官民連携により早期造成を実現した阪南2区人工干潟 | |
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<技術賞奨励賞> 構造物の鉛直、水平変位および傾斜角計測システムの開発と運用 | |
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中央復建コンサルタンツ株式会社
綜合計測株式会社 大阪大学大学院教授 松井繁之 | |
傾斜・上下不同変位および水平変位は構造物に悪影響を与える代表的な変状要素であり、正確な量的確認が大切である。特に、都市再生および都市機能改善を目的として、地下空間の高度利用が活発であり、既設構造物の直下あるいは直近工事も増加しており、既設構造物の変位管理計測は重要な土木技術分野となっている。一方、既設構造物は、経年劣化を伴い、変位・変状状態の管理が重要な要素となっている。その変位管理値は、1/10mmが要求精度であるが、従来型の計測器では精度の確保が困難である。特に水を利用した従来型の水管式沈下計は温度による影響が大きく、基本的な見直しが必要であるとされてきた。その理由は、温度変化による計測機器の見かけ上の変化を排除しにくいことである。そのため、新たなセンサーとして渦電流センサーに着目し、さらに計器の構造を根本から見直した新しい変位計測機器を開発した。本器は、非接触の状態で変位変化を高精度に測定することができ、また水中利用も可能である。
今回、開発された鉛直、水平および傾斜測定器は、大気温度変化の影響を殆ど受けることがなく、従来型の計器で必要とされていた温度補正用の事前計測が不要となる。 本業績は、「鉛直変位、水平変位、傾斜角」のト−タル計測システムとして開発され、より高精度な計測を実現し信頼性が高まったことや、現場の省力化の進展が大きく期待されることなどが評価された。 | |
長区間多測点鉛直水平変位設置状況 | |
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<技術賞奨励賞> 南阪奈道路の建設 | |
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国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
大阪府富田林土木事務所松原建設事業所 奈良県高田土木事務所 日本道路公団関西支社奈良工事事務所 大阪府道路公社 | |
南阪奈道路は、日本最古の官道「竹内街道」とほぼ並行し、延長16.9kmの大阪と奈良を結ぶ自動車専用道路であり、大阪府南河内郡美原町から奈良県北葛城郡新庄町に至る「平成の竹内街道」として、国土交通省・大阪府・奈良県・日本道路公団・大阪府道路公社の5者が協力して整備を行い、平成16年3月28日に全線一斉の供用開始を行った。
美原JCTでは、阪和自動車道上空での電磁波対策を行いながらの超大型クレーンによる大ブロック桁架設、大黒トンネルでは文化財への考慮から低土被り工法での施工とした。また、国定公園内を通過することなどから、自然環境や周辺環境に配慮したデザイン等の採用や、竹内街道の歴史性を考慮した色彩の採用等、種々の取り組みを行った。 南阪奈道路の開通により、大阪・奈良間の現道や、渋滞が恒常化しつつあった西名阪自動車道の渋滞緩和、および近畿圏中心部や関西国際空港と奈良県中南和地域間の大幅な時間短縮など、アクセスの向上や広域的ネットワークの形成により、地域の連携強化および活性化が期待されている。 本業績は、5事業者の連携により長期にわたって様々な技術的課題に対応しつつ、景観への配慮、自然環境への調和を図りながら、地域の発展に大きく貢献する高速道路を完成させたことが評価された。 | |
「南阪奈道路」(美原ジャンクション) | |
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