平成24年度土木学会関西支部技術賞

掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。
各業績のより詳細な説明は「Microsoft Internet Explorer」でご覧になることをお勧めします。

■ 受賞者 ■
■ 受賞業績内容説明 ■

技術賞
紀勢線那智川橋りょう早期復旧工事
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
JR京都線他6線直下における貨物道路新設工事
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
集中工事での既設鋼I桁の連続化による総合的な改良工事
阪神高速道路株式会社大阪管理部
阪神高速技術株式会社
阪神高速技研株式会社
三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社
西名阪道御幸大橋の床版急速取替
西日本高速道路株式会社関西支社南大阪高速道路事務所
横河工事株式会社大阪支店
川田工業株式会社大阪支社

技術賞部門賞
河川氾濫予測システムの整備
兵庫県県土整備部
三井共同建設コンサルタント株式会社
国際コンテナ戦略港湾における次世代高規格コンテナターミナル整備事業
国土交通省近畿地方整備局港湾空港部港湾物流企画室
国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所
氾濫原における水害危険度分布に基づく洪水対策の評価法とその適用
中西宣敬、辻光浩、西嶌照毅、瀧健太郎
景山健彦、尾上貴洋、鵜飼絵美、江頭進治
松田哲裕、間野耕司

▲ページの頭に戻る


業績内容説明
<技術賞>
紀勢線那智川橋りょう早期復旧工事
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
 平成23年の台風12号による河川増水で流出した紀勢線の那智川橋りょうの早期復旧を望む地域の人々の声に応えるため、種々の検討を行い、短期間で復旧工事が実施された。
 本工事は、流出した橋脚ならびに上部工を復旧するものであるが、橋脚の再構築工法と工事用桟橋の架設工法の選定が、工期短縮に際しての課題であった。
 そこで、まず橋脚については、洗掘への対策と支持力の確保が可能であり、建設時の仮締切を必要としない「パイルベント橋脚工法」を採用することで施工性の向上、工期短縮を図った。併せて、2本の柱の間に流木等が滞留し、流水に影響を与えることのないよう、乱流防止工の設置も行った。
 また、仮設桟橋には、斜張式設備を用いて片持ち式でパネルを前方へ設置し、そのパネルを導材として次の支持杭を施工することで、架設および撤去を短期間かつ安定的に行うことができる「鋼製パネル斜張式架設工法」を採用した。これにより、標準的な桟橋工法で問題となる施工条件や工期短縮の課題を克服した。
 さらに、上部工については、同種の桁を新たに製作すると工期が長期化するため、保有していた災害予備の桁を、設計耐力を確認したうえで本設桁に転用することで工期とコストの両方を縮減した。
 本業績は、早期復旧に適した工法や構造形式を採用し、流出した橋りょうを3ヶ月という短期間で復旧したこと、また本工事の早期完成により地域に貢献したことなどが評価された。
那智川橋梁復旧工事の完成(運転再開時の様子)
那智川橋梁復旧工事の完成(運転再開時の様子)
「紀勢線那智川橋りょう早期復旧工事」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
JR京都線他6線直下における貨物道路新設工事
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が推進する梅田・吹田基盤整備事業に伴い、吹田貨物ターミナル駅へのアクセス道路(吹田貨物専用道路)が新設された。
 本業績の対象は、吹田貨物専用道路のうち、JR京都線他6線の鉄道線路直下を横断するURT(Under Railway Road Tunnelling Method)工法による地下道路ボックスの構築工事である。
 線路下でのURT工法の実績は数多くあるものの、本工事は、1)URTボックス延長が過去最大級、2)高速・高密度の6線の線路直下での施工、3)URTボックスが地下水位以深、4)軟弱地盤中での施工、5)4%下り勾配でのエレメント推進という厳しい施工条件下において行われた。
 これらの課題に対して、地盤改良(止水、地盤強化)やエレメント刃口の改良、軌道や地盤、エレメントの計測管理を確実に行うことで、鉄道の安全・安定輸送を確保しながら、高い施工精度でURTボックスを構築している。また、ボックス全体が地下水位より低い位置にあるため、エレメント継手部の止水性を高め、その結果天井工の省略も可能にしている。
 本業績は、6つの鉄道線路直下での施工という厳しい条件下において、エレメント推進工法により安全に地下貨物道路を新設したこと、また施工精度を確保するための刃口の改良や継手部の止水対策なども評価された。
工事完了後の地下道路ボックス(舗装施工前)
工事完了後の地下道路ボックス(舗装施工前)
「JR京都線他6線直下における貨物道路新設工事」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
集中工事での既設鋼I桁の連続化による総合的な改良工事
阪神高速道路株式会社大阪管理部
阪神高速技術株式会社
阪神高速技研株式会社
三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社
 阪神高速13号東大阪線の法円坂区間は、難波宮史跡の保護を目的として、短径間鋼床版で多くの単純桁からなる特殊な構造形式が採用されているが、この構造形式は疲労に対し脆弱であるため、鋼桁に繰り返しき裂損傷が発生していた。また、同区間では走行性・周辺環境においても問題を抱えていた。
 そこで、ライフサイクルコストを考慮のうえ、損傷リスクを大幅に低減させることを目的として、わが国初となる「1支承線化による連続化」による大規模構造改良工事を実施した。この連続化工事により48車線分の伸縮装置が撤去され、走行性や周辺環境も大幅に改善したことから、法円坂区間の構造上の問題は解消された。
 また、法円坂区間は大規模医療機関や主要官庁施設が集積する地域を通過することから、工事に伴う交通流の影響が広域に発生することが予測されていた。そこで、併走する一般街路の固定規制を不要とするために鋼製高欄を連続化の対象から外すことや、大規模フレッシュアップ工事(東大阪線の8昼夜連続通行止め)として行う他の規制を伴う補修工事に合わせて、集中的に連続化工事を実施することなどにより、周辺道路の交通流への影響が最小限となるように努めた。
 本業績は、車両の走行性や周辺環境にも配慮しながら、疲労による損傷リスクを低減させるような連続化工事を行ったこと、またこのような連続化工法は応用性が高く、今後の発展性が期待できること、さらには他の補修工事に合わせて集中的に実施することにより、周辺交通への影響を最小限に留めたことなどが評価された。
わが国初となる1支承線化による連続化工の作業状況
わが国初となる1支承線化による連続化工の作業状況
「集中工事での既設鋼I桁の連続化による総合的な改良工事」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞>
西名阪道御幸大橋の床版急速取替
西日本高速道路株式会社関西支社南大阪高速道路事務所
横河工事株式会社大阪支店
川田工業株式会社大阪支社
 御幸大橋は西名阪道の法隆寺IC近くにあり、昭和44年に供用を開始している。昭和54年頃から騒音・振動問題が発生し、近年では床版劣化が進行したため環境面も考慮して床版取替えを行った。これまで高速道路での同種工事は、連続通行止めや反対車線へのシフトが可能な路線で実施されてきた。しかし西名阪道は重交通で代替路線がないことから、長期間の通行止めが不可能であった。そこで夜間施工・昼間1車線開放という高速道路では初めてとなる施工条件下において工事を行った。
 まず、T期工事では、仮設鋼床版を使用した昼間交通開放の技術を確立した。また、U期工事では、仮設鋼床版のコンパクト化とともにプレキャスト床版の継手の改良を行い、1枚当たりの施工時間をT期工事に対し6割に短縮した。さらに、V期工事では、1時間で30N/mm2以上の圧縮強度が出現するコンクリートを用いた新たなプレキャスト床版の継手を開発し、T期工事における施工時間の約4.5割に短縮するなど、さらなる急速施工を実現した。
 一方、工事前後の環境測定結果を比較すると、騒音レベルについては2〜6dB、振動レベルでは5dB以上の低減が図れた。
 本業績は、仮設鋼床版の導入ならびにプレキャスト床版継手の改良など、先駆的な工法を用いて施工したこと、また夜間施工・昼間1車線開放という厳しい条件下において、大幅な施工時間短縮を達成したことなどが評価された。
高速道路で初めてとなる夜間施工・昼間開放による施工条件下での床版取替状況
高速道路で初めてとなる夜間施工・昼間開放による施工条件下での床版取替状況
「西名阪道御幸大橋の床版急速取替」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞部門賞(喜ばれる技術)>
河川氾濫予測システムの整備
兵庫県県土整備部
三井共同建設コンサルタント株式会社
 平成21年台風第9号の豪雨では、兵庫県西播磨地域を南北に流れる千種川水系の上流部の至る所で溢水し、佐用町で20名が亡くなるなど、水位上昇が速く、避難時間に余裕の少ない河川の上流域で被害が多く発生した。このため兵庫県では、市町が避難勧告等をより的確に発令するための情報提供が必要であると考え、県下全684河川において河川氾濫予測システムを整備することとし、まず千種川水系をモデルケースとして整備に取り組んだ。
 本システムは、河川を数キロの区間ごとに分割し、気象庁の降雨予測データと流出解析モデルを使って各区間の代表地点における3時間先までの水位を予測するもので、氾濫の恐れがある場合にはそれを地図に表示して県独自のシステム(フェニックス防災システム)により市町に配信するものである。
 整備にあたっては、学識経験者や県・市町の関係者で構成する「氾濫予測システム検討会」を設置し、予測精度の確認やシステムの操作性の向上など、本システムを活用するための課題を解決した。
 本業績では、このシステムの活用によって、出水時における危険地域の事前察知や地域を限定した市町の避難勧告等の発令が可能になり、人的被害の最小化に繋がること、また使命感を持って短期にシステムを構築し実用に供せしめたことなどが、地域に「喜ばれる技術」として評価された。
河川氾濫予測システムの表示画面(千種川水系)
河川氾濫予測システムの表示画面(千種川水系)
「河川氾濫予測システムの整備」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞部門賞(成し遂げた技術)>
国際コンテナ戦略港湾における次世代高規格コンテナターミナル整備事業
国土交通省近畿地方整備局港湾空港部港湾物流企画室
国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所
 国土交通省港湾局は、国際基幹航路の我が国への寄港を維持・拡大することを政策目的として、阪神港(神戸港・大阪港)を国際コンテナ戦略港湾として選定し、その目的を実現するため、ハード・ソフト一体となった施策を集中して実施してきた。その施策の一つとして、神戸港ポートアイランド第2期地区において、供用中の岸壁を次世代高規格コンテナターミナル※1として整備するプロジェクトを進めてきた。
 本プロジェクトを実施した神戸港ポートアイランド第2期地区は、関西地区の経済を支える物流拠点であり、プロジェクトの実施にあたっては、神戸港における物流機能を可能な限り阻害しないことが課題とされた。
 これらの課題に対し、1)港湾物流への影響を小さくするため供用施工とする、2)岸壁を占有せざるを得ない場合もそのエリアを必要最小限とする、3)採用される工法は既設構造物に影響を与えないものとする、といった点において適切に技術を活用しながら対応し、事業を実施した。
 本業績では、神戸港における物流機能を供用しながら阻害することなく工事を行い、総延長1,150m、水深16mの次世代高規格ターミナルを短期間で整備したこと、また長尺アンカー工法等の高度な技術を用いた耐震性能の向上を果たしたなどが、「成し遂げた技術」として評価された。
 *1次世代高規格コンテナターミナル:官民一体でハード・ソフトが連携した施策を展開するターミナルのことであり、民間事業者による一体的な運営がなされ、ターミナルの規模として最大水深15m以上、延長1,000m以上、奥行き500m程度を有するターミナルを指す。
完成した神戸港ポートアイランド(第2期)地区 次世代高規格コンテナターミナル
完成した神戸港ポートアイランド(第2期)地区 次世代高規格コンテナターミナル
「国際コンテナ戦略港湾における次世代高規格コンテナターミナル整備事業」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る

<技術賞部門賞(新しい技術)>
氾濫原における水害危険度分布に基づく洪水対策の評価法とその適用
中西宣敬、辻光浩、西嶌照毅、瀧健太郎
景山健彦、尾上貴洋、鵜飼絵美、江頭進治
松田哲裕、間野耕司
 本業績は、氾濫原管理の重要性に鑑み、滋賀県全域を対象として、氾濫原の任意の地点における水害危険度分布や各種洪水対策を評価し、水害に強いまちづくりを目指すため、超過洪水時の潜在的な水害リスクを広く共有できる地先の安全度マップを作成し公表を行ったものである。
 まず、様々な洪水規模を対象とした水害危険度分布を評価するため、降雨流出、洪水流および氾濫流を評価できる水文・水理統合モデルを構築している。これを用いて、洪水の規模別に、堤防の破堤の影響および各種洪水対策の効果も考慮して、氾濫原の任意の地点における浸水深および流体力を算定した。さらに、これらの結果、および被害曲線や避難曲線を用いて、任意の地点の被害の程度と発生確率の関係を表現するリスクマトリックスを考案し、水害危険度を可視化した「地先の安全度マップ」として公表している。
 本業績では、各種の洪水対策の効果を含む洪水リスク情報が整備されることにより、今後、河道に対して実施されてきた治水対策に加え、水害防備林、霞堤、二線堤、堤防強化、土地利用や建築規制、避難システムといった総合的な対策の進展が期待される。また、スムージング処理を行い、判り易い公表を行う等、住民の防災意識の向上をも促すことのできる可能性も持ち合わせる「新しい技術」として評価された。
地先の安全度マップ(浸水深図、長浜市南部、200年確率)
地先の安全度マップ(浸水深図、長浜市南部、200年確率)
「氾濫原における水害危険度分布に基づく洪水対策の評価法とその適用」のより詳細な説明を見る

▲ページの頭に戻る


支部トップページ | 技術賞のページ