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■ 受賞者 ■ |
■ 受賞業績内容説明 ■ |
阿倍野歩道橋架け替え事業 |
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大阪市建設局
中央復建コンサルタンツ株式会社 大日本土木株式会社 片山ストラテック株式会社 |
北浜逢阪貯留管築造工事(平成の太閤下水) |
大阪市建設局 |
栗平地区河道閉塞に対する仮排水路及び暗渠排水管による越流防止策 |
国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所
大成建設株式会社関西支店 大成建設株式会社本社・技術センター 中電技術コンサルタント株式会社 |
道頓堀川水辺整備事業(とんぼりリバーウォーク整備事業) |
大阪市建設局 |
阪神高速淀川左岸線(1期)の建設 -河川空間を再生する先進トンネル- |
阪神高速道路株式会社大阪建設部 |
二次覆工を先行施工した超近接双設トンネルの施工 |
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大阪府富田林土木事務所
株式会社熊谷組関西支店 |
複々線区間における弾力性ある輸送設備計画について |
西日本旅客鉄道株式会社建設工事部
西日本旅客鉄道株式会社大阪工事事務所 |
<技術賞>
阿倍野歩道橋架け替え事業 | |
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大阪市建設局
中央復建コンサルタンツ株式会社 大日本土木株式会社 片山ストラテック株式会社 | |
大阪の天王寺・あべのターミナル駅周辺では、大規模な再開発事業に基づき新しい街づくりが進められている。
その計画の一環として架け替える阿倍野歩道橋は、デザイン・設計コンペを実施し、地域住民・学識経験者によってアルファベットの「a」をデザインとした平面形状が採用された。阿倍野(abeno)の「a」からまちがはじまるをテーマに、街の発信的・発展的な「仕掛けづくり」となるデザインコンセプトに基づき計画・設計した。平面形状は鋼単純トラス橋、鋼2径間連続トラス橋、鋼3径間連続トラス橋で構成されている。 鋼トラス桁は、厳しい桁高制限の中で鋼床版と下弦材を一体化することで支間40mを跨ぎ、剛性が高く揺れを感じにくい歩道橋を実現した。また、日差しが透過する膜屋根等の設置により利用者の快適性や利便性を向上させ、歩いて楽しい変化に富む立体空間を創出した。基礎構造は、地下鉄躯体を改築することにより基礎用の隔離した空間を設け、地下躯体との一体化を避けた形で大口径場所打ち杭や鋼管杭を打設し、安定した基礎を構築した。 本業績は、歩道橋のランドマークとしてのデザインの工夫や地域住民意見の反映、耐震性や機能性にも優れた技術を用いた整備、さらには地域の活性化にも資する点などが高く評価された。 |
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『阿倍野abenoの「a」からまちがはじまる』 | |
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<技術賞> 北浜逢阪貯留管築造工事(平成の太閤下水) | |
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大阪市建設局 | |
北浜逢阪貯留管(平成の太閤下水)は、大阪市の合流式下水道緊急対策の一環として、道頓堀川及び東横堀川の水質保全を図るため、概ね10年に1度の大雨を全量貯留する施設である。
北浜逢阪貯留管は本線シールド(内径φ6,000mm、延長約4.8km)、本町連絡渠(内径φ4,000mm、延長約174m、)、道頓堀連絡渠(内径φ3,350mm、延長約125m)、3箇所の会所(内径φ2,800〜2,950mm、深さ約30〜50m)の6つのシールド工法で構成される。 本線シールドは、大阪市の主要幹線道路直下で最大土被りが約50mの大深度・高水圧下での長距離施工のため、カッタービットは掘進中の交換が不要となるよう耐摩耗性に優れたビットを採用した他、本町連絡渠はシールドの到達方法に全国初の直接切削セグメントによる側面接合を用い、会所部は全国で3例目の上向きシールド工法を用いた。 本業績は、大阪市中心市街地での大深度・高水圧という厳しい条件下で、長距離掘進や側面接合、上向きシールド工法の採用など、極めて高いシールド技術を結集されている他、工期の短縮、幹線道路上作業の縮減を実現したこと等、今後活用できうる先駆的かつ独創的な技術が数多く示されていることが評価された。 |
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北浜逢阪貯留管の施工状況(直接切削セグメント部) | |
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<技術賞> 栗平地区河道閉塞に対する仮排水路及び暗渠排水管による越流防止策 | |
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国土交通省近畿地方整備局紀伊山地砂防事務所
大成建設株式会社関西支店 大成建設株式会社本社・技術センター 中電技術コンサルタント株式会社 | |
平成23年9月に上陸した台風12号により栗平地区に発生した天然ダム(閉塞高約100m、縦断方向750m、下流面の勾配約50%の急斜面)の越流による決壊防止対策は現地までの陸路がなく、限られた機械で仮排水路の設計施工を翌年の出水期までに完了する必要があった。
まず、セメント改良土による水路基盤を造成し、表面の洗掘防止対策としてモルタル吹付け構造の仮排水路を設計施工し、長大斜面(落差94m)には、お椀状の"イボ型粗度"による流速低減対策工法を開発し適用した。 この仮排水路は3度の台風には耐えたが、平成24年9月の台風17号により半壊流失した。しかし、仮排水路が残存していたため、下流域への土砂流出を最小限に抑えることができ大規模な崩壊には至らなかった。 その後、半壊状態にあった仮排水路に代わる排水路の構築が次の出水期までに必要となり、天然ダム内に国内で初めて推進工法による暗渠排水管を計画施工した。現在はこの暗渠排水管は確実に機能し、天然ダムの安定性を確保している。 本業績では、土砂ダム崩壊を阻止した土木工学的意義の大きさや、その困難の克服と復興に寄与した点、また早期対応と工期短縮、さらに安全性の確保を着実に実施したこと等が、その技術全体として評価された。 |
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栗平地区天然ダム全景(越流時仮排水路)(H24.9.20) | |
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<技術賞> 道頓堀川水辺整備事業(とんぼりリバーウォーク整備事業) | |
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大阪市建設局 | |
大阪ミナミの中心を流れる道頓堀川をまちの重要な空間として川を身近に感じ、水の都大阪を象徴する名所に相応しい賑わいあふれる水辺空間の創造に向け、平成7年度より水辺整備事業を実施し、水位調整や高潮防御等の機能を持つ水門及び関係橋梁、川沿いに水面に近い高さの水辺遊歩道を平成24年度末までに整備した。
本事業では、整備計画策定時から地域意見を取り入れ地域と連携・密着し、沿川開発と一体的整備を積極的に進め、さらに水辺の利活用の規制緩和を国へ働きかけ、社会実験として水辺空間のイベント等を実現し、地域貢献できるソフト的取り組みを実施した。 加えて社会実験の課題を国等と共有し、その解決として民間事業者が占用主体となりうる規制緩和を受け、平成24年度から日本で初めて包括的に民間事業者がエリアを占用し、イベント誘致等に民間ノウハウが活用可能な仕組みを構築するなど、さらなる賑わいの創出に向けた積極的な取り組みが進められている。 本業績では、事業目的を関係者で設定・共有し、その実現のための各種施設整備やソフト事業の実施に際し、関係法令など様々な制約条件をクリアし実現に導いた担当者のマネジメント力をはじめ、地域振興にも資する点等も含め総合的観点から評価された。 |
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道頓堀川における賑わい創出の取り組み(難波八阪神社船渡御) | |
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<技術賞> 阪神高速淀川左岸線(1期)の建設 -河川空間を再生する先進トンネル- | |
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阪神高速道路株式会社大阪建設部 | |
大阪都市再生環状道路の一翼を担う、阪神高速2号淀川左岸線(1期)の島屋〜海老江JCTまでの区間(約4.3km)が開通した。開通区間は開削トンネル構造が8割を占め、そのうち2.4kmは一級河川である正蓮寺川を陸地化した後にトンネルの構築が行われた。この陸地化工事では川底に厚く堆積していた底質(ヘドロ)の処理方法が課題となった。
先行して行ったセメント系固化材を使用した原位置固化改良工法では、改良底質が強い臭気を放ったことから、工法の見直しを行い、底質を浚渫して現地プラントに圧送し超高圧フィルタープレスで脱水固化を行う方法(浚渫脱水固化工法)を採用して、悪臭拡散・水質汚濁の防止に努めた。また、底質の一部はPCB等で汚染されていたため、水質・大気などの環境監視を行いながら上下左右、上流・下流の六面で封じ込めを行う等、周辺の環境保全に最大限の配慮をして施工を進めた。 本業績は、都市部の河川空間を活用して高速道路の地下トンネルを建設したものであり、臭気対策や底質汚染という困難な課題を克服して地元住民の長年の要望であった河川の陸地化を成し遂げ、地域の環境改善に大きく貢献したこと、また、トンネル区間に新構造・新技術を積極的に導入し安全・安心の向上などに努めたことが評価された。 |
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正蓮寺川の陸地化が完了し開削トンネルを施工している状況 | |
「阪神高速淀川左岸線(1期)の建設 -河川空間を再生する先進トンネル-」のより詳細な説明を見る |
<技術賞部門賞(成し遂げた技術)> 二次覆工を先行施工した超近接双設トンネルの施工 | |
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大阪府富田林土木事務所
株式会社熊谷組関西支店 | |
本事業は、府道大野天野線改築事業として、既存道路の渋滞緩和や、消防新庁舎・救命救急機関へのアクセス等を目的として行われた。このうち丘陵部における双設トンネル区間は、各々の支保工外面の離隔が8cmしかなく、加えて、大阪層群の砂礫からなる未固結地山であったため、後行トンネルの掘削に伴う緩み荷重を、先行トンネルの二次覆工で担う設計とし、先に先行トンネルを二次覆工した後に後行トンネルを掘削するという極めて事例の少ない「無導坑式超近接双設トンネル」である。
この工法は、設計方法や管理基準等が未確立であったため、当初設計の精査、課題抽出と対策立案・施工時の計測結果のフィードバックといった一連のプロセスを確立し施工した。 その一例として、施工前の検討において、掘削による緩みを最小限に抑制するため、後行トンネルにおける吹付けインバートによる早期閉合の追加実施を決定し、先行トンネルへの影響を計測しながら、安全に工事を完成させた。 本業績は、事例に乏しい超近接双設トンネルという工法を取らざるを得ない制約条件の下で、一連の施工プロセスを確立し困難な課題を克服したことが「成し遂げた技術」として評価された。 | |
無事に完成し、供用開始した双設トンネル(赤峰トンネル) | |
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<技術賞部門賞(喜ばれる技術)> 複々線区間における弾力性ある輸送設備計画について | |
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西日本旅客鉄道株式会社建設工事部
西日本旅客鉄道株式会社大阪工事事務所 | |
JR西日本の西明石〜草津間の複々線区間(4線区間)は、外側線を活用した「新快速」により利用者が着実に増加してきた。一方で近年、利用者から列車遅延に関する意見が多く寄せられている。その要因の一つに輸送障害発生後に列車遅延の早期収束を阻む「線路競合」や列車運行が継続出来なくなる「折り返し設備の不足」といった設備面での課題がある。
まず、外側線と内側線の列車遅延が相互に干渉し合う事象である「線路競合」については、主要ターミナルである新大阪駅や高槻駅で設備改良計画を策定しその解消に向けた取組みを行い、つぎに輸送障害時の「新快速」の運行を妨げていた「折り返し設備の不足」ついては吹田駅や尼崎駅にて設備改良を行うことにより「新快速」の運行を可能としている。 本業績は、鉄道固有技術である計画策定に必要な"停車場配線"技術や、施工場面での"線路切換"技術をトータルコーディネートし、確実に供用開始に繋げることにより輸送障害発生後における「列車遅延の早期収束」、「ダウンタイム短縮」を実現し、利用者への安全安定した輸送サービスの提供に大きく貢献したことなどが「喜ばれる技術」として評価された。 | |
線路競合の解消に向けた設備改良計画(新大阪駅) | |
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